矯正治療で歯を動かし、保定が終了した後は、そのまま動かずに歯並びが維持されなければなりません。そのためにはバランスのとれた無理のない歯並びになっていることが必要です。身体に無理のない状態になってはじめて、その形が安定して維持されます。
たとえば、歯は空隙のある方へ傾いて倒れていく習性があります。また、咬み合う歯を失うと、その空隙に向かい、伸びたように移動していきます。歯は単独でピタリとその場に止まっていることはできないのです。
ですから歯並びは、整然と並び、上下でよく咬み合うことにより、それぞれの正確な ”位置” や ”高さ” を維持しているのだといえます。また、歯並びは筋肉にも支えられているのです。歯並びの外側からは、口のまわりの筋肉が抱え込むように支えており、内側からはその力に拮抗するように舌の力が作用しています。上下の歯がしっかりと咬み合い、内と外の筋肉のバランスの釣り合ったところに歯はいごこちよく安定しているものなのです。
お口を閉じるために無理をしないと閉じられない前歯の前突したケースでは、無意識のときには口は開いたままとなっていることが多く、外からのささえる力が弱いために歯は少しずつ前へ倒れやすくなる傾向にあると考えられます。
きれいに並べられた歯並びが、その後も長く安定し続けるためには、意識することなく自然と口が閉じられるようなバランスのとれた口元を作り上げることが大切です。それは口元を美しく整えることと同じ意味であると私たちは考えています。
A 治療前:
リラックス時(力をぬいた時)の口唇は、前突している歯の影響で開いた状態になっています。意識しないといつも開いたままとなっています。この状態から歯並びと軟組織のバランスのとれていないことがわかります。
B 閉唇時:
口を閉じるために口元に強い力が入っています。上口唇にも力が入っていますが、特に下口唇を上方に引き上げて口を閉じるようにしています。そのため、オトガイ部に強いゆがみが認められます。
C 治療後:
前突していた前歯を十分後退させ、歯並びと軟組織のバランスをとる治療を行いました。口を閉じていますが、どこにも歪みは認められません。楽に閉じることができるようになったのです。鼻から下の鋭角だった部分はゆるやかになり、唇から下のくぼみ、顎のラインもきれいにでています。美しい側貌を得ることができました。
※治療結果には個人差があります。
※口元に力を入れなくても、いつも閉じていられる状態を作ることが歯並びを安定させることになると考えています。美しさだけを追及するわけではありません。身体にとって無理のない状態にすることが大切なのです。